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「珍しいね、君が一番じゃないなんて。それより、久遠って誰だろう」
聞いたことのない名前だ。
「あぁ、あいつだよあいつ。このあいだ転校してきたんだけど、こんなに頭良かったんだな……」
と、近くにいた男子が教えてくれた。
彼の視線の先に、背の高い目つきの鋭い男がいた。
彼が久遠か。
声をかけようか迷っていると、僕より先に文倉が彼に近づいていった。
「久遠君って頭いいんだね。私も自信あったんだけどなー」
優等生の仮面を被ってこそいるものの、若干悔しさが隠しきれていないように見えるのは僕の気のせいだろうか。
「別に大したことじゃないさ。むしろあのレベルのテストで満点がとれなくて悔しいくらいだ」
今度は明らかに文倉の肩が強張った。
負けた上にあんなことを言われたらプライドは粉々だろう。
「大した自信ね。けれど、次は負けないわ。」
「次があるなら、ね」
「どういう意味?」
「さぁね」
そう返すと彼は振り向くことなく自分の教室へと帰っていった。
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