文倉雫

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僕が文倉雫について語れることはほんのわずかだ。 明星学院の三年生。 文芸部所属。 非常に整った容姿の持ち主で、腰まで届く長い黒髪。 趣味は読書。 好きな色は黒。 好きな飲み物はコーヒー。 こんなところか。 以前は「同じ学校の生徒」にしか過ぎなかった彼女。 僕らの間には何一つ接点がなかったから当然だったが。 僕は帰宅部だし、クラスも違えば家が近い訳でもない。 だが、今の僕は彼女にすっかり惹かれている。 それも外見にではなく、彼女の全てに。 今僕の中で彼女はただの「同じ学校の生徒」ではないのだ。 もっとも、向こうの認識としてはそれに毛がはえたくらいにすぎないのだろうけど。 そんな僕と文倉の出会いは、三ヶ月ほど前に遡る。
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