故郷

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流れる水道水の濁りをボーっと眺める。   ここは、この水と同じ。   全てが不透明で、不親切で、飲むと苦味だけが残るのだ。   私は毎日、夢を見る。   母の顔を……夢に見る。   近くに居れば、反発ばかりだった。甘えに似た反発心で、母からの深い愛情をはねのけた。   だのに、私という生き物は都合良くできていて、今はこんなに欲している。   旅立つ日、気丈な母が見せた涙が忘れられない。   初めて、後悔というものを覚えた。   それでもあの日、希望と夢を抱いて私は旅立った……はずなのに。   何故、こんなにも帰りたいと切に願うのか。
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