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ラスカはクレイフィンに一歩だけ踏み出すと、右手を差し出しながら言う。
ラスカ:「クレイフィン、私達の下に戻る気はないのか?」
クレイフィン:「一一またその話か?、ラスカ…お前は遭うたびにその話題を口にするな」
ラスカは鼻息が荒くなるほど興奮状態になりながら力説する。
ラスカ:「当たり前だっ!、クレイフィンが何故…我々の下を去ったんだ?!」
クレイフィンは小さく鼻で笑う。
クレイフィン:「私という小さな存在を必要としない世界を見たかったのだ。お前達が見る世界に私の欲を満たしてくれるものがない…だから私はお前達から離れたのだ」
ラスカ達:「!?」
ラスカ達はクレイフィンの放つ言葉のひとつひとつを心に刻み込むよう話に耳を傾ける。
ポアス族①:「そんなっ一一」
ポアス族②:「一一クレイフィン様…私をお見捨てに…?」
ポアスティング族の集団に動揺の色が駆け巡る。
この手の内容の話はこれまでにごまんとやってきた。
クレイフィンは彼女達のする話にうんざりとしていた。
クレイフィン:「…私を必要とせずに、お前がいる限りポアスティング族は安泰であろう?…何故、去った者を追おうとする。追うのは族の意向に反するだろう?」
ラスカはクレイフィンの言葉に「ぅ…」と詰まる。自信に満ち溢れた表情が崩れていく。崩れていったその表情は今にも泣き出しそうだった。
ラスカ:「あ、貴女が…それを言いますか!?…あ、貴女が我々…ポアスティング族にどのくらい必要で大切かお分かりに一一」
ラスカの言葉をクレイフィンが腕で遮る。
ラスカ:「!」
クレイフィン:「一一もう良い。私は過去に捕われたままの亡霊に縋り付くのは好ましいとは思わない。第一、その口調はやめろ…耳の裏がもぞもぞする…」
そういうと、クレイフィンのウサギの耳がぴくぴくとなる。
それを聞いたラスカや、彼女達はわなわなと悲しい気持ちに包まれる。
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