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クレイフィン:「…話はそれだけか?…用がなければ私は行くぞ」
クレイフィンはそういってくるりとラスカ達に背を向けて歩きだす。
ラスカはそんな彼女を見て唇を噛み締める。
ラスカ:「(一一クレイフィン、私は絶対に貴女を取り戻してみせるからなっ!)」
ラスカは心の中で、去っていったクレイフィンに向かって叫んだが、クレイフィンは一度も振り返ることなく姿を消したのだった。
クレイフィンが去った後、ラスカが率いるポアスティング族の女達の近くにザイル族の男三人組が歩み寄る。
ザイル族①:「一一まだ同族いびりをやっているのか?、恥ずかしいとか思わねーのか?」
三人組の真ん中のザイル族①が真面目な顔つきをし、眉をひそめながらそうラスカに言う。
しかし、このザイル族は彼女達がどんな内容の話をしていたかは知らなかったが、周囲の様子から何か悪い雰囲気を感じ取っていた。
そんなザイル族①の言葉にラスカは無表情で対応する。
ラスカ:「ザイル族ごときに関係ない。これは我々の問題なのだ」
ピクッ…とザイル族①の連れの二人の尻尾が反応する。
ザイル族はおおざっぱで、単独がちな行動を取りやすい種族だったが、一度、絆を深めるとそれは強く長く繋がる。
ザイル族①:「…待て」
ザイル族①は仲間の前に腕を出して諌(いさ)める。
ザイル族②③:「!、グラント…」
ザイル族②③が瞬きをする。
グラントと呼ばれたザイル族の男とラスカが睨み合う場面が続く。
ラスカの後ろに控えていたポアスティング族の女達が徐々に目が据(す)わっていく。
その眼差しはグラントやザイル族②③に対してだった。
そんな様子を周囲で見ていたクレイフィンとの争いを見てみぬ振りをしていた他の種族達がポアスティング族に絡むグラントとその仲間達を見て、ざわざわとざわめきたつ。
しかし、そんな中でもグラントはラスカに言う。
グラント:「仲間への鼓舞はいくらでもやって構わないが一一『そういうことはやらないほうがいい』と俺は思うぜ?」
ラスカはグラントににこりともせずにお礼を言う。
ラスカ:「肝に銘じておく」
ラスカはそれだけグラントに告げると、他のポアスティング族を引き連れるようにして去っていった。
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