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ラスカ:「一一何の真似だ」
グラントとラスカはギラギラと睨み合う。
グラント:「相手の命を断つ約束ではなかったはずだぜ」
ラスカ:「一一それは私の勝手だ」
ラスカとグラントが話していると、彼の後ろにいたラーシャの身体がふらりとふらつく。
グラントの出現と、自分の命が助かったことへの安堵感に一一緊張の糸が切れた。
グラントは彼女の身体を尻尾で支えると素早く身体を抱え上げる。
グラント:「ポアスティング族、お前の疑いは晴れた。ここは引くのがお互いの為だと思うが?」
ラスカは既にラーシャへの戦意は失せていた。
ラスカ:「…好きにしろ」
ラスカは彼等に背を向けると、遠くで見守っていたポアスティング族の男のクレーが彼女の後ろから着いていって消えた。
グラントはラーシャの顔を見てホッとため息を吐く。
グラント:「一一俺に心配をかけさせるんじゃねーよ…」
冷たい口調とは違い、表情はとても穏やかなものだった。グラントはこの対戦を期に、ラーシャを本当に今まで以上に大切に扱うようになった。
< 通路 >
十真(とおま)は息を飲むというか、息を止めて見入っていた数秒、数分のうちにあっという間に終わっていた。
クレイフィン:「…フム。まぁ…こんなものだろうな」
クレイフィンの呟きによって、十真やゼファル達はハッと我に返った。
通路は圧倒的に強いラスカの話で持ちきりだった。
< 数分後 >
ラーシャを抱えたグラントが家(ホーム)に戻ってきた。
通路にいた彼等はそんなグラント達に見向きもしていなかった。
彼等にとって、『対戦に興味があっても相手に興味はない』という暗黙のルールのようなものが存在していた。
グラント:「………」
グラントはラーシャの顔色を窺いながらも、二人の妖精を連れて通路を歩いていた。彼は、此処に唯一存在する医務室に彼女を連れていっていた。
医務室は基本的に彼等が自分から使用することは少ない。グラントのように仲間を連れていくのが通常だった。
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