第二章

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クレイフィン:「一一フォルメントやゼファルから何も聞いていないのか?、私とゼファルの種族が対立していることを」 十真(とおま)は人差し指で頬を掻きながら、視線を上に逸らす。 十真:「一一ちょっとだけその話は聞いたんだけどさ、二人は知らないって一一」 クレイフィンはゼファルとフォルメントを見た。 ゼファルは肩をすぼめ、フォルメントはそわそわと俯きかげんになって座っていた。 クレイフィンは小さなため息を吐く。 クレイフィン:「一一ゼファルとフォルメントは知っていると思っていたんだが…私の勘違いだったのかもな」 フォルメント/ゼファル:「!!?」 ゼファルとフォルメントはバッとクレイフィンを見た。クレイフィンは口許に小さな笑みを浮かべていた。 十真:「俺も知らないって言われた時、びっくりしたよ…」 十真は「あはは」と笑う。 シンザスがティニーを心配そうに見つめていたのをクレイフィンは知っていたが、彼等が何故…そんな表情をしているのかは知らなかった。 クレイフィンは聞きたい、という気持ちにならなかったので、そっとしておくことにする。 クレイフィン:「ポアスティング族とウルフハウンド族の争いは、私やゼファルがこの世界に来た時から既に始まっていた。私がゼファルに出会う前は対戦に興味を引かれなかったが、種族の世間体を考えて行(おこな)っていた。一一当時の私の地位的に、同族との対戦はあまり…面白くなかった。だから私は異種族と対戦をしようとしたんだが一一」 そこでクレイフィンは言葉を切る。十真は思わずゴクン、と唾を飲む。 十真:「ど、どうなったんだっ?」 クレイフィン:「一一組んだ相手が悪かった。ウルフハウンド族は『最強の種族』を目指していた為、実力の知れないポアスティング族と戦いたがっていた。だから私との対戦を引き受けた。私もまた、異種族の力が知りたかった。相手とはお互いの利益が一致していたんだが一一」 クレイフィンは普段からあまり表情を変えなかったが、全てを言い切る前にフ…と、悲しげな色が瞳に宿る。 クレイフィン:「一一私の考えが足らなかった。私がこの世界の秩序を理解していなかったんだ一一」 十真はそんなクレイフィンを見たことがなかったので、話すのを止めたいという衝動に駆られた。しかし…彼には聞いたからには全てを聞かなければならないという意思が働いた。
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