第三章

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十真(とおま)は目的のものをさがすよりは、まず図書館の見学をしてみることにする。 地球という世界の中にあるちっぽけな日本にある図書館とは随分と違っていたのは明らかだった。 本棚には『赤黄青緑紫』と全ての枠が綺麗に縁取(ふちどり)りされていた。 十真:「(…この縁取りって…何か意味があるのかな?)」 十真が小首を傾げていると、頭の中に聞き慣れた声が響いて来た。 フォルメント:「(一一その縁取りは種族ごとの世界に文献が分けられた本達よ)」 十真:「わっ」 十真は突然の声に小さな声をあげてビクッとなる。 フォルメント:「(んもぅ…いい加減…心で会話することになれなさいよね!)」 十真:「(ぅ…。でも…突然…は対応が難しいって)」 十真が苦笑する。 『クリスタル』と化した妖精達は、行動の自由を奪われていたが、パートナーとの会話のみ許されていた。 フォルメント:「(しかたないわねー…あ、さっきの枠の縁取りの話に戻るわね?『赤黄青緑紫』は5種族の世界の本なの。赤は『人間』、黄は『レパード族』、青は『ウルフハウンド族』、緑は『ザイル族』、紫は『ポアスティング族』…という風にね)」 十真は本棚達を見回しながら相槌を打つ。 十真:「(へぇー…俺達は『赤』なのかぁ…って、ん?…待ってくれよ、フォルメント。此処には『妖精』の本はないのかよ?)」 フォルメントはその言葉にどう返事していいか迷った。 十真:「(…はぁ…)」 十真はフォルメントの戸惑いを感じとるとため息を吐き、歩きだした。 フォルメント:「(一一トオマ?)」 フォルメントは不思議そうに十真の名前を口にする。 十真はフォルメントがいない左胸のポケットをぽふぽふと軽く叩く。 十真:「(…なんか…フォルメントが近くにいないのって…変な感じだなぁ…)」 十真の呟きはフォルメントには伝わらなかった。 十真:「(あ…いや…なんでもないよ。一一そういえば…他の種族の本もあるんだよな??…フォルメントがいないのに…本の内容の解読とか…どうしたらいいんだ?)」 十真の疑問にフォルメントは微笑む。
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