第四章

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フォルメントが眠りについて一人きりになった十真(とおま)は左右にある本棚に近寄って片っ端から本を漁ることはなかった。 彼はただ、あてもなく…先の突き当たりが見えない図書館(インディフォーク・ライブラリー)の通路を歩いていた。 十真:「(…俺は確かに存在を…しているんだよな?)」 歩いていると、十真はふっ…とそんな不安が脳裏を駆け巡る。 通路にある正方形の椅子に座って本を読んだり、本棚を漁る彼等は終始無言で…目が虚ろだった。 彼等にとって、周囲の存在は無に等しかった。 < どくん…どくん… > フォルメントが身近にいないという事に自然と不安が大きくなる。 今までは当たり前のようにフォルメントが傍にいて、ゼファルとクレイフィンがさも当然と仲間としてみてくれている。 十真はこの世界に来て、一人、孤独感を味わうのは初めてだった。 そわそわと辺りを見回す十真にとって、図書館(インディフォーク・ライブラリー)の無音がいかに心細いかを増幅させていっていた。 十真:「(…この世界に来て一一弱くなったよなぁ…俺って)」 十真がひしひしとそう感じていた、その時だった。 一一ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ… 十真:「!?」 突如、前方からけたたましい騒音が響き渡って来たことに十真はビクッと身体をびくつかせる。 その騒音は左右同時に、こちらに向かってくるのははっきりとわかった。 何故なら、その騒音と共に…『子供がはしゃぐ声』が聞こえてきたからだった。 ?①:「ひゃっほ~~♪」 ?②:「いけいけいけぇっ~♪」 十真がその姿を目にしたとき、あんぐりと口を開いたまま固まってしまう。 騒音の正体は本棚にある柱の下に設置されてあった『緑のボード』の他に、本棚に備え付けられていた左右に移動式の『長い長い梯子(はしご)』の音だった。 そして、声の主は15歳くらいの幼さを表面に残す豹に似た種族のレパード族の男女だった。 レパード族の男女は同じタイミングで、梯子の終着地点にあったバルコニーをひょいひょいと次の梯子に華麗に飛び移りながら十真のほうに向かってきていた。
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