第四章

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十真(とおま)はその眼球の動きを見逃さなかった。彼はにんまりと微笑みながら、ラーン(♂)に語りかける。 十真:「一一俺にまだ何か…隠してるだろ?」 ラーン:「…そんなことないよ?」 十真:「ふーん…?」 十真は怪しむ眼差しをラーンの目から逸(そ)らさずに見つめた。 ラーンは『どうしても言いたくない話』があったので、咄嗟に視線を彼から逸らし続けてしまう。 ライズ(♀)はそんな弟の情けない姿、正直な彼に呆れ返りながら告げる。 ライズ:「ラーン、せっかくだから話してあげなさいよ。一一トオマが『本当に知りたい話』を」 十真とラーンはライズを見た。戸惑っていたラーンは、渋々(しぶしぶ)と言ったように…『保守派と革新派があからさまに対立してしまったのかという真実』を話し始めた。 ラーン:「一一保守派のポアスティング族と革新派のウルフハウンド族の争いには一一全て、ある種族の子供が関わっていたんだ一一」 十真はラーンの言葉に「ゴクッ」と唾を飲み込む。 ライズは語り始めたラーンを見てゆっくりとため息を吐きながら一一物思いに耽(ふけ)る。 ラーン:「そのある種族の子供には、この世界に召喚された種族達の中でも特別な力を持っていた。それに目を留めた…妖精王一一当時の妖精王が生まれながらにして特別な力を持つ子供に目を留めた。妖精王は自分の権力を確かなものにする為に、その子供の力を得ようと奮起した。しかし一一その時、まだ妖精王はその子供が持つ特別な力の効果を知らなかったんだ」 十真:「…その特別な力って一体…?妖精王にとって不利益な存在なのか?」 十真はラーンを見つめる。 ラーン:「一一考え様によっては、ね」 十真:「…どういう事だ?」 ラーン:「ある種族の子供が持っていた力一一それは一一」 ラーンの言葉を十真が意識を集中させながら素直に待つ。 ラーンはそんな十真を見た次の瞬間、後頭部に頭を添えておどけながらこう口にする。 ラーン:「一一何だろうねぇ…僕もそんな昔の話…そこまではよく知らなくってねぇ…」 十真:「えぇっ!?」 十真は驚愕した後にガクッとうなだれる。 十真:「そんなぁ…肝心なとこを…」 ラーン:「あはは…ごめん、ごめん。でも他はバッチリ」 十真は上目遣いにラーンを見る。ラーンはその眼差しにニッコリと応じる。
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