第四章

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クレイフィン:「トオマ、私の同族がザイル族の女と男をめぐって対戦したのを覚えているか?」 十真(とおま)は頷く。 十真:「ああ…、あの明らかに相手のザイル族の人の勘違いだった…アレだよな?」 クレイフィン:「そうだ。実は…疑いをかけられたあの同族の女は一一召喚された後にこの世界にいる全てのポアスティング族をまとめる『長』をしているんだが…」 クレイフィンはそこでティニーを見る。 ティニー:「あっ…」 ティニーはそわそわと身じろぐ。彼女は身を縮こませる。 クレイフィン:「…この世界の同族をまとめるラスカの先代は一一私だったんだ」 十真達:「!?」 ゼファルはクレイフィンに何かあると分かっていたが…『長』だとは思わなかった。 しかし、そういわれて…クレイフィンの『無敗記録』に納得することが十真達には出来た。 シンザス:「クレイが…ポアスティング族の…長だって?…でも…そんな地位にいたのに…どうして同族と距離を置いたんだ?」 クレイフィンはシンザスの言葉にフッと笑う。 クレイフィン:「一一それは秘密だ。例え…仲間であってもな」 クレイフィンの笑顔にシンザスや十真達は思わず、グッと詰まる。 その笑顔には何とも言えない迫力があったからだ。 クレイフィン:「…『長』の地位を引き受けた時、先代から保守派についてレクチャーを受けたんだ。そのレクチャーと、トオマが聞いて来たラーンの話と…なんか違った印象を持ったんだ」 十真:「…どう違っているんだ?」 クレイフィンは十真達の真剣な眼差しに彼女は口を開く。 クレイフィン:「私の一族には『異種』に興味を抱く心を基本的に持ち合わせていないんだ。現に、ウルフハウンド族の争いがなかったとしても…私達は『同族との対戦』しかやらなかっただろうなと思う」 クレイフィンの言葉に対して、十真達は妙に納得してしまう。 フォルメント:「………」 フォルメントはクレイフィンの言葉を聞いて、十真の前のパートナーだった『深晴(みはる)』が生きていた時の時代を思い出していた。 その当時、クレイフィンがポアスティング族の『長』をしていたのかは知らなかったが、今も昔も現状は変わっていないのは明らかだった。 フォルメント:「(…確かに…クレイの話を聞いて、あの人との生活のことを思い出すと…トオマの話にはクレイフィンが言ってたように…どこか腑に落ちないところがあるわね…)」 フォルメントは難しい顔で考え込む。そんな彼女の表情に誰も気付くことはなかった。
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