第三章

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フォルメント:「一一『ミハル』…」 十真:「…え?」 十真(とおま)は聞き慣れた日本人の名前に思わず振り向く。 < …ツゥー… > 十真:「!?」 小さなフォルメントの目から零れ落ちる涙を見て十真は怯む。 十真:「(えっ…ぇっ…何事!?)」 十真はゆっくりと近寄るとフォルメントの顔を覗き込む。キラキラと輝く涙がフォルメントの頬を流れ落ちる。 十真:「………」 十真は無表情になると、真面目な眼差しをして考える。 十真:「(一一『ミハル』?、日本人…だよな?)」 フォルメント:「…がい……さないで…」 十真:「!」 十真はフォルメントが小さい声で何かを呟く。小さすぎて聞き取りづらい。 十真:「………、フォルメント…おい、フォルメント…」 十真は囁くようにフォルメントに呼び掛ける。 フォルメント:「ん…この声は一一トオマ…?」 フォルメントはゆっくりと目を開けて身体を起こす。ぺたんと座り込むと、十真を見上げる。 十真:「…怖い夢でも見たのか?」 フォルメント:「え?」 フォルメントがポカンとしていると、十真は彼女の頬に伝う涙を人差し指で優しく拭(ぬぐ)う。 フォルメント:「あ…ぇっ?!、あたし…泣いて…たの?」 十真は微笑む。 十真:「みたいだねー。俺…急に泣き出したから…もう心配で心配で…」 その言葉にフォルメントは顔を赤らめる。 フォルメント:「な、泣いてなんかないわよっ」 フォルメントはそっぽを向くが、十真は人差し指で彼女の頭を撫でる。 フォルメント:「わ…ちょっと…あたしが小さいからって…甘やかすような行為はしないでよーっ」 十真:「無理だって…実際…小さいし、可愛いし…」 フォルメント:「かっ!?」 フォルメントは『可愛い』という言葉に反応をしてしまう。 フォルメント:「変な事を言わないでちょうだいよっ」 十真:「アハハハハハハ」 十真はニコニコしながらフォルメントを掴んで手に乗せる。 フォルメント:「…何よー、今更…あたしの機嫌を取ろうだなんて考えてないでしょーね?」 十真は左右に頭を振る。 十真:「全然ー」 フォルメント:「なっ…」 十真は笑いながら出入口に向かう。
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