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その最期の微笑みは死へ対しての恐怖ではなく、自分の役割から解放される安堵の表情だったのかもしれない。
微笑む男:「…楽しみ…だ…。…先に逝(い)って…じっくりと一一眺めていよう」
そして、微笑む男は自分が背負って来た役割から荷が下りることに安堵しながら徐々に呼吸がゆっくりとなって息を引き取った。微笑む男を見て、無表情の男は横を通り過ぎて玉座の間にある椅子に座る。
無表情の男:「この世界はようやく俺のモノになった」
無表情の男の眼差しはどこと無く悲しみを帯びていた。
無表情の男:「………」
無表情の男は微笑む男の亡骸(なきがら)を見て、昔を思い出す。それは自分が微笑む男を手に掛けようとは思っていなかった頃一一。
微笑む男:「やぁ、×××…また君は此処に来たのか?」
無表情の男:「相変わらず…無防備だな」
微笑む男は無表情の男を笑顔に迎え入れる。迎え入れた彼は複雑な表情をしている。
微笑む男:「すみませんねー、君が優秀すぎるんだ」
無表情の男:「何で謝る?」
微笑む男は何も言わずにニッコリと笑う。
微笑む男:「一一×××、君はこの世界をどう思う?」
無表情の男:「は?、貴方がそれを俺に聞くのか?」
微笑む男は苦笑する。
微笑む男:「やっぱり…気になるものさ、いろいろとね」
無表情の男は呆れ返る。
無表情の男:「一一いろいろと、か。ま、俺には何の関係もない。貴方が生きている限りは」
微笑む男は少し目を丸くして無表情の男を見る。
微笑む男:「そうだな」
頷き、目を細める微笑む男。無表情の男はそんな彼を見つめる。
無表情の男:「…?」
その瞳を見て無表情の男は違和感を覚える。相手は笑っているが、瞳は悲しみに満ちていた。
そして微笑む男はすっと視線を落とし、直ぐに遠くを見つめる。
微笑む男:「×××よ、君は妖精王が治めるこの世界を素晴らしいと思うか?、自分の世界に異世界の種族を…本当に呼び寄せる価値一一君は必要だと思うか?」
無表情の男は眉間に皺(しわ)を寄せる。
無表情の男:「貴方が…そんな戯言を言わないでくれよ。一一妖精王は俺達の光りなんだからさ」
微笑む男:「一一光り…か」
微笑む男は小さく微笑んで頷く。その日から、今日のこの日を迎える心境は直ぐに変化が訪れた。
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