第三章

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十真:「そういえばさ、次の対戦はいつになるんだ?」 フォルメント:「え?…えっと…明後日よ」 十真:「?」 十真(とおま)はフォルメントの視線が不用意に動き、表情が固くなっているのに気付く。そんな彼の様子を表情から察したフォルメントは慌てて左胸ポケットに頭を埋める。 十真:「…フォルメントー、なんか俺に隠し事してない?」 フォルメント:「し、してないわよー…アハハハ」 十真は右手を上げると、左胸ポケットに突っ込んでフォルメントを掴み上げる。 フォルメント:「…きゃーっ、ななな、何するのよーっ」 フォルメントは手足をばたつかせる。顔はうっすらと赤い。十真はニタニタしながら目の前にフォルメントと向き合う。 フォルメント:「何よ…その不適な笑みはっ」 十真:「フフフフフ…フォ~ルメント…この俺に何か隠し事してるだろ?」 フォルメント:「ぅ…」 フォルメントは再び視線を十真から逸らす。そしてチラチラと十真を見る。やがて彼女は小さなため息を吐きながらバタバタと手足を動かす。 フォルメント:「分かったからーっ、そんなに私を見ないでよー」 フォルメントは恥ずかしそうに両手で顔を覆う。十真は小さなため息を吐くと左手で彼女を掬い上げ、左胸ポケットの前まで運ぶ。 フォルメントはキッと十真を見る。 フォルメント:「…トオマのバカ…」 十真:「アハハ…俺に隠し事するからだよ。…で?、何をそんなに気まずそうな表情をしてたの?」 フォルメント:「…対戦は毎日、どこかで欠かさずあってるわよ」 十真:「え?、でもフォルメントは明後日だって…」 フォルメントは頷く。 フォルメント:「…本当は明日もあるの。明日はトオマに出てもらいたくなくって…」 十真はニコッとフォルメントに微笑む。フォルメントは彼の表情を見て顔を赤らめる。 妖精にとって、パートナーの笑顔を見るのは何より嬉しい。 十真:「そうなんだ?…でもどうして明日はダメなんだ?」 フォルメントは俯(うつむ)きかげんにポツリと声を絞り出すように言う。 フォルメント:「…明日の対戦相手は土人形なんだけど…今日と違って『初級者』はいない…『階級なし』だけなの…」 十真:「えっ!?…それ…って…大丈夫なのか?」 十真はあの対戦を思い出し、『初級者』であの苦戦していたのに『階級なし』だけで戦うだなんてありえないことだった。 驚く十真を見たフォルメントは心配そうに見上げる。
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