第三章

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十真(とおま)はガシガシと頭を掻く。彼は何かを考え込んでいた。その表情を近くで見ていたフォルメントは不安そうな眼差しを向ける。 フォルメント:「(もう…誰かの『あんな姿』を見たくないのに…)」 フォルメントは無茶な戦い方をしてきた『昔のパートナー』を思い出す。そして直ぐに十真の表情が変わる。 フォルメント:「…トオマ?」 フォルメントは心配そうに声をかける。すると、十真はニコッと微笑みかけると、右手の人差し指で彼女の頬を撫でる。 十真:「一一フォルメント、やっぱり俺…明日も戦いたいよ」 フォルメント:「トオマ…」 十真はニカッと笑う。 十真:「早く俺も魔法を使いたいって理由もあるんだけど…、やっぱり…男の俺として強くなりたいっていう…。一一ダメかな?」 フォルメントは真っ直ぐな眼差しを十真に向けられて、顔を赤らめる。彼女はパートナーの真正面からの頼み事に弱い。 フォルメント:「~っっっ、そんな風に見ないでよーっ」 フォルメントは頭を抱えて悶絶する。それを見た十真はニコニコと笑っていた。 十真:「ん?、何が??…うーん…どうしようかなー。俺、どうやらそんな表情をする君をもっと見たいなーとか思ってたりするんだけど」 それを聞いたフォルメントは慌てて左胸のポケットに頭まで突っ込んで隠れる。 フォルメント:「そ、そんなのを見たって楽しくなんてないわよっ」 十真:「アハハハハハ」 左胸のポケットから聞こえる声に十真は楽しそうに笑う。真っ直ぐ向いて歩く彼に誰も振り向かない。小さく微笑むと、フォルメントに言う。 十真:「ごめん、ごめん。…だからさ…出てこいよな」 フォルメント:「ぅ…」 フォルメントは今まで悪戯っ子のようにはしゃぐ声音が急に声音が優しくなり、ゆっくりと頭を出して十真を見る。 そこで、その優しい眼差しと出会う。 フォルメント:「…出て来てあげたわよっ」 十真:「アハハハハ…可愛いなー、フォルメントってば」 フォルメント:「お、お世辞なんて言っても何も出てこないわよーっ」 大きな人間と小さな妖精。二人は出会って間もないが、少しずつ距離が縮まっていく。十真とフォルメントはお互いにそれを感じ取っていく。 十真:「そういえばさ、明後日に対戦するのを明日に変更が出来たりするのかー?」 フォルメントは左胸のポケットから十真を見上げる。 フォルメント:「…どうだろ…?…『あそこ』に行ってみないと分からないわね」 十真:「『あそこ』?」 フォルメントは頷く。
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