プロローグ

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無表情の男:「………」 無表情の男は椅子に座って目を閉じて懐かしむようにしていた。 < ボロボロ… > 無表情の男:「!」 すると、微笑む男の身体が砂の様にボロボロと崩れていく。目を丸くしている間に、彼の身体のかけらは風がないのにサラサラと吹き飛んで無くなる。 無表情の男:「(一一これがこの世界を治めた者の最期か…)」 無表情の男は長いため息をふぅー、吐く。 この微笑む男の正体はこの世界を統べた妖精王。その妖精王に勝った無表情の男は挑戦者だった。 この日の出来事はその世界に関わる妖精や召喚された種族を驚愕させた。再びこの世界の王が変わる時代を迎えたが、世界が特に何かが変わるという事はなかった。 < 数百年後 > 当代・妖精王がいる場所は自身の魔法で強力な壁を作って存在を消していた。それは今の妖精王が王となった時に初めて知った事だった。もちろん、妖精や『パートナー達』は当代・妖精王の居場所は全く知らない。 パートナー、それは歴代の妖精王が定期的に異世界から召喚する別種族の生き物。 妖精達は召喚された種族の中から相性の良い者とパートナーを組まされた。それは妖精という種族にとって、最高の喜びだった。そして、組んだパートナーがより強くなることは名誉なことだった。 < 玉座の間 > 当代・妖精王(無表情の男)は玉座の間にある椅子に座っていた。そして足元にあった浅いため池を足を組んで肩肘をつき、見下ろしていた。彼はいつものように、ため池を見つめて外の世界を見ていた。 妖精王:「一一つまらないな」 ため池に映(うつ)るのは、妖精と種族のコンビが二人一組になって一対一で対戦し合っているものだった。当代・妖精王はいつもそうして強くなる彼等を眺めていた。 歴代の妖精王は日頃から対戦を見てきたが、当代・妖精王は中でも対戦が好きだった。そのためか、自然と異世界からの召喚の数が徐々に増え始めていく。増え始めるのと同時に、コンビが解消していく確率が増えていった。 先代・妖精王(微笑む男)は彼のようにコンビが解消していくのを胸が痛むのを感じながら幅広くて浅いため池から見下ろしていた。 こうした違いから、先代・妖精王は彼等から『非好戦王』、当代・妖精王は『好戦王』とよく比較されるようになった。
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