第三章

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レパード族①は小さな土人形をおちょくっていた時に見せていたような笑顔を浮かべたまま、身体の自由ではない土人形を見下ろす。 レパード族①:「…何が出るかな♪、何が出るかな♪」 レパード族①の身体には妖精が施した『容量増幅(アンプリフ・キャパシティー)』の効果が持続しているせいか、魔法を放ちたくてうずうずしていた。 『禁断の遊び(トリフル・フェイト)』の魔法は相手の動きを止めるだけではない。この魔法にはもう一つの効果がある。 毛で縫い留められた毛から中央に向かって影が伸びる。影は一つになると、何かの文字を浮かび上がらせる。 十真:「あれは…文字…なのか?」 その文字はその種族にしか分からない。フォルメントは他の妖精達と同じように文字に集中する。 < しゅぱぱぱっ > レパード族達は慌ててその場から全速力で離れる。 レパード族①は彼等の行動には興味がない。ただ、ペロリと唇を舐(な)めあげる。 レパード族①:「…キキキッ、成る程…『雷』かー」 再び長い尻尾が左右に揺れ動く。彼は両腕を少し高めに広げると瞬時にパチパチと稲光を発生させる。 別の種族の彼等がそのレパード族①に見入っていた妖精達が、背中を押したり、引っ張ったりして動かそうとしている。 その中で十真(とおま)の左腕をフォルメントが「ぅーんっ、ぅーんっ」と力いっぱい引っ張っていた。 十真:「…何してんの?」 フォルメント:「それはこっちのセリフよっ…早くあのレパード族から離れなさいよ!…階級なしだからといって…『容量増幅(アンプリフ・キャパシティー)』が掛かった種族に近寄るのは危険なのよ…なのに雷魔法だなんて。…無差別に攻撃する可能性が高いのにっ」 フォルメントはレパード族①の妖精を睨む。十真が彼に背を向けて赤いボードを急加速させる。 レパード族①は少し高めに構えていた両手を左手を下に、右手を真上に持ってくると、左脇腹に構える。 レパード族①:「…パチパチ、ピシピシ、ピッカピカー♪…『雷撃砲火(ブロウ・ランチャー)』」 そう唱えると、左脇腹に光りと稲光がキュワキュワキュワ…と音を立てながら一気に集まり、小さな土人形に向かって放出される。 < ドゴォ…ンッッッ > 小さな土人形は固まったままその魔法を全身に浴び、砂で出来た身体が粉々になる。
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