第三章

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十真(とおま)は落下する瞬間、とてもゆっくりと世界が動くような感覚に陥る。 十真:「(…あぁ…ここまでか…)」 空から地面まではかなりの高さがあった。ここから落ちたら無事ではすまされない。 ?:「一一…オマっ!」 十真:「(だ…れだ?)」 誰かが自分の名前を口にする。遠すぎて誰の声か判断しずらかった。しかし、十真はその方向に向かって無意識に手を伸ばしていた。 十真:「フォル…メント…っ」 フォルメントは必死に小さな身体にある羽根を羽ばたかせてこちらに向かって来る。 フォルメント:「トオマっ、トオマっ!!」 彼女は今にも泣き出しそうなくらい、必死な表情をして空を駆けていた。 十真の落下する姿が前のパートナーの姿と被る。フォルメントはもうパートナーを失わないようにしようと思っていたのに一一。 十真に向かって伸ばされた両手は悲しくも空を切り、視界から消えていく。 フォルメント:「いやーっ、ト~オマーっ」 フォルメントの悲鳴に近い叫びは、砂嵐のような音によって掻き消される。 その叫びが十真の耳に聞こえた瞬間、彼はポスン…という音をたてて砂漠へと墜落した。 十真:「………」 十真は衝撃で気を失い、砂漠に仰向けの状態になっていた。 < さぁぁぁぁぁぁ… > という音をたてて十真の身体を砂漠の砂が瞬時に被さっていく。そして、ズブズブと砂地に飲み込まれていった。 全ての部分が見えなくなった頃、フォルメントは十真が落下した場所を目指し…そして砂を掘り返そうと砂に触れようと手を伸ばしたその時、グッ…と後ろから腕を掴まれる。 フォルメント:「っ?!」 フォルメントが振り向くと、凄い形相をした妖精(♂)が彼女に吠える。 妖精(♂):「バカヤロウ!、死にたいのかっ!!この砂に触れた瞬間、あのパートナーは終わりだ。…あのパートナーは諦めろ、この砂は普通の砂じゃないことぐらい…知っているだろう!?」 フォルメント:「いや…放してよ…っ!、もう…私の力不足のせいでパートナーを失うわけには一一」 その妖精(♂)は真顔になる。
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