第三章

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妖精(♂):「…例のパートナーの事か…?、あいつのことはもう忘れろ…と言ってるじゃないか」 フォルメントはピクリと身体をびくつかせる。思わず、その妖精(♂)を睨むように見つめてしまう。 フォルメント:「『ミハル』…」 そう口にした瞬間、二人のいた場所の真下から…ズボッと右腕が伸びて来て妖精(♂)を握りしめる。 フォルメント達:「!?」 ズブ…とそこから十真が砂まみれになった状態で頭を出し、俯(うつむ)きかげんになって妖精(♂)に言う。 十真:「…俺の…フォルメントをいじめるな…よ」 フォルメント:「トオマっっ」 フォルメントは両手で口を押さえてハラハラと涙を流す。 妖精(♂):「なっ…階級なしが一一この砂漠から生還するなんて…ありえない…」 十真は肩から下まで砂漠に身体を取られていた。彼はフォルメントと妖精(♂)の声と彼女の悔しさと悲しみに満ちた感情を感じ取り、意識を取り戻した。 彼を救ったのは左腕に抱かれた赤いボード。それはたまたま近くに落ちて来て、共にめり込んでいた。 フォルメント:「トオマっ…本当に…トオマ…なの?」 十真は砂まみれの頭をフォルメントの方に向いて顔を上げる。 そこには疲れ果てている見慣れた顔の十真がいた。 十真は右手に掴む妖精(♂)を疲れからパッ…と手放すと、フォルメントからバッと飛んで来て彼の人差し指を思いきり抱きしめる。 十真:「フォルメント…この砂漠は一体…何なんだ?、俺の世界の砂漠と…なんか違うような…」 十真の問いに膨れっ面をした妖精(♂)が答える。 妖精(♂):「『流砂(りゅうしゃ)』だよ。…この砂漠の土は水分を多く含み、重みのあるものを砂に引き込むんだ。一一だから…この砂漠には決して誰も落ちないようにしているのさ」 十真:「!!!、な…」 十真が辺りを見回すと、かなりの人数が落ちたはずなのに誰もいない。 よく見るとフォルメントのように泣き腫らす妖精達があちこちにいる。 十真:「………、なんて危ないところで…俺達は…」 そう言いかけた時、ズンッと急に身体が沈む。
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