第三章

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十真:「ぅ…わっっ」 十真(とおま)が目を丸くし、フォルメントが目を見開く。 フォルメント:「トオマっ…いや…一人にしないで…誰かっ、誰かっ」 妖精達に魔法で大きな人を動かし、助けるような効力がない。 召喚された種族達は見知らぬ人間を助ける義理はさらさらない。彼等にとって、自分が生き延びることだけが全てだ。 十真:「ちっ…俺の冒険も一一ここまでか…」 十真の左腕と赤いボードは飲み込まれ、砂漠とフォルメントの距離が縮まっていく。 十真は満面の笑みをフォルメントに送ると、彼女が巻き込まれないように払いのける。 フォルメント:「きゃ…あっ…!」 十真は目を閉じて自分の運命を受け入れる。 十真:「(フォルメント…君との生活…楽しかったよ…)」 そう最期の言葉を彼女に贈る。 < グンッ > その時、十真の残されていた右腕の手首を誰かが掴む感触を感じとる。 既に頭まで砂に埋もれた十真にとって…違和感でしかなかった。 ?:「一一マ、…トオマ!!…自分の運命に抗(あらが)うんだ!!」 そう誰かが叫び、グンッ…と十真を渾身の力で引き抜く。 十真:「(…ぇ?)」 ズボッ…と頭、肩、身体が砂漠から抜け出る。自分を引き抜いてくれたのは見知った顔であり、今まで見たことがない真面目で必死な眼差しをしたウルフハウンド族のゼファルだった。 十真:「あんたは一一ゼファル…なのか?」 そう呟いた瞬間、胸に僅かな衝撃を感じとる。 フォルメント:「トオマっっ…の馬鹿ぁっ」 フォルメントが胸にしがみついて泣きじゃくっている。 十真が困惑していると聞き慣れた罵声がする。 シンザス:「バカヤロウ!!、勝手に妖精を残したまま死を選ぶんじゃねぇよっ!!…こんな砂ごとき…消し飛ばしてくれるわっ」 シンザスがそういってゼファルの頭をバシバシと叩く。 ゼファル:「…イタタ…トオマ、シンザスが心配して怒ってる。…その理由が分かるよね?」 十真は俯き、小さく頷く。 十真:「俺が…諦めたから…か?」 ゼファルは小さく微笑むと、右手を十真が埋まっていた場所に翳(かざ)すと…ブワッと砂が払われて…赤いボードが姿を現す。 そしてそのままこちらに向かって来る。 十真:「あ…」 フォルメントは十真の胸倉を掴んだまま泣き腫らし、ギュッと掴んだままだった。 十真が赤いボードに乗ると、ゼファルに礼を言う。
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