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< 玉座の間 >
妖精:「お願い、殺さないで!!」
玉座の間に少女の声が通る。彼女は人間より遥かに小さく、背中に生えている半透明な翼を羽ばたかせ両手両足を大きく開いている。
その妖精の後ろには傷だらけになり、瀕死状態の若い男がうずくまっていた。
若い男:「…フォル…」
か細い声で彼女の名を口にする。
< ビクッ >
フォルと呼ばれた妖精は反射的に振り返る。その妖精の目の前には当代・妖精王が冷たい笑みを浮かべたまま立っていた。
妖精王:「挑戦者よ…お前の実力はそんなものか?、…『生き物』にならずに『上級』の階級を得たというのに一一興ざめだな」
< ばっ >
フォルと呼ばれた妖精は若い男に触れたまま振り返る。
若い男:「ま一一待て…」
若い男は震える身体を起こす。フォルと呼ばれた妖精は慌てて腕を掴む。
妖精:「『ミハル』!、もう良いの…もうお願いだから…これ以上は…」
ミハルと呼ばれた若い男はフォルと呼んだ妖精に微笑む。そして当代・妖精王に視線を向ける。
若い男:「…妖精王、俺は先代の方針と違って貴方の方針は大嫌いだ。俺が貴方に勝ったら王となり一一王となってあんな無駄な対戦を廃止させてやる!」
当代・妖精王は若い男の言葉を聞いて笑う。
妖精王:「アハハハハハハ!、妖精王だと?一一『生き物』と化していないお前が…この妖精王に?!、寝言は寝て言え」
当代・妖精王はそういうと右手に光りを集めて若い男にその魔法をぶつける。若い男の身体は光りを帯びた風を全身に受けて風船や枕のように軽々と回転して吹き飛んでいく。
妖精:「いやっ、妖精王…もう止めて下さい!…ミハルっ」
当代・妖精王は彼女には魔法をぶつけることはない。妖精と召喚された種族のコンビは必ず妖精が生き残るようになっている。何故なら召喚された種族の方は『替えが利く』からだ。
< ドガッ…ズザザ >
若い男:「うぐっ…っ…」
若い男は大理石に身体を打ち付けて、流される。口がきけても身体の自由は既にきかなかった。
妖精は届かないと分かっていても両手を前に広げて彼を受け止めようと羽ばたきながら駆け寄った。
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