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ひゅんひゅんっ…と微かな空を切る音がゼファルの尖(とが)った耳に入る。
ゼファル:「?!」
ゼファルは最初の焔の球を難無く避けると、音がした方を見る。
シンザス:「…ゼファル!」
シンザスが彼より少し遅く気付き、叫ぶ。
ゼファルはシンザスがいる位置と、焔の球達の軌道を読みながらひゅんひゅんっと避ける。
レパート族①:「ちっ…ノンス」
レパート族がノンスを見ると、ノンスはゼファルを見る。
新たに送り込んだ焔の球と最初の焔の球はゼファルの隙を狙いながら何度も襲い掛かっていた。
ノンス:「(…流石は『あのウルフハウンド族』。一一シンザスの力…というわけではなさそうだ)」
ノンスはシンザスから少しずつ離れるようにして避け続けるゼファルを見た。
話していた頃と比べて引き締まった表情にぶるっと背筋が震える。
レパート族①:「…根は弱虫なのに…対戦の時に性格が変わるウルフハウンド族かぁ…キキキ、なんか楽しいっ」
レパート族は尻尾をくるくると振り回すと、再び焔の球を左手からぽんぽんぽんぽんと連続して放つ。
ノンスはパートナーの思考を見てニタリとほくそ笑む。
ノンス:「…あいつの身体能力を逆手に取った作戦か…それでこそ、レパート族ってやつだな」
レパート族①:「どうもっ♪」
ノンス達:「(後は一一時期を待つだけ)」
< …………………… >
ゼファルは2つから3、4…と焔の球の数がかなり増えた。
途中からシンザスはゼファルの肩にしがみついていた。
ゼファル:「シンザス、大丈夫か?」
キリリと引き締まった顔立ちのゼファルに心配されたシンザスは冷めた眼差しで彼を見つめる。
シンザス:「ほんっと…対戦中は別人だなぁ…お前っていつもそんなんだったら…オレ、苦労しないのになー」
ゼファル:「は?」
ゼファルは不思議そうにシンザスを見つめる。
ゼファル自身は自分の変化に気付いていない。そして今は、焔の球を赤いボードに乗ったまま…左右、上下と紙一重で避け続けていた。
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