第六章

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十真(とおま)は無意識に空いていた左手を赤いボードの落下ポイントに向け、風が赤いボードを包み込んで浮き上がらせる姿をイメージする。 突き出された彼の右手の平に応じるように大口を開いた元土人形の中から西洋風金髪少女の赤いボードが勢いよく、十真の頭上に飛んできた。 頭上に飛んできた赤いボードは反転すると、西洋風金髪少女の足元にピタリと停止する。 彼女は十真に礼を言うと飛び去った。 十真:「今…俺…確かに魔法を…?」 礼を言われた十真だったが、放心状態だった。しかしフォルメントは優しげな眼差しを向けていた。 フォルメント:「おめでとう、トオマ」 十真はフォルメントからそう言われると何となく実感が沸いて来るような気がしてくる。 彼は気持ちを切り替えると、元土人形の化け物を見下ろす。 第二の腕は土人形の時よりも細く、素早く動くように進化していた。 第二の腕は彼等を捕らえると、大口に落とし込んだり…振り回したりしていた。 細かな動きに『階級なし』達の仲間意識が徐々に崩れていく。 十真はどうしたら良いか分からなかった。魔法を放てるようになったはずのに、何も出来ない自分がそこに確かに存在していた。 彼はゼファルやクレイフィンのように確かな強さを持っているわけではない。二人のように『元土人形を破壊するのではなく、彼等を守りたい』と思い立たせた。 その願いが自分の身体とフォルメントの身体を光り輝かせる。 十真は自分の身体が光り輝いているのに気付いていなかった。しかしその時、自分の傍に誰かが存在しているのが確かに分かった。 トクン…トクン…と十真の胸が温かくなる。 十真はゆっくりとその存在のほうをみる。 フォルメント:「…クスクス」 フォルメントが十真を見て微笑んでいた。 それは、その存在はフォルメントだった。これまでに確かにいつも傍にいたが、それ以上に身近に感じる。 十真:「(これは一一この感情は一一)」 フォルメントは微笑みながら十真に言う。 フォルメント:「一一行きましょう、トオマ。貴方が何をすべきなのか、どうすべきなのか…貴方の胸(なか)にある一一さぁ…心に従って…」 フォルメントの言葉を聞いて、ぼぉ…としたトランス(催眠)状態になる。
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