第六章

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十真(とおま)の身体はよりいっそう、光り輝くのが増す。 元土人形から逃げ惑う彼等は誰かが魔法を放つのを気にしていなかったが、十真の様子に気付いて立ち止まる。 彼等の行動は妖精の意思かもしれない。『あのフォルメント』のパートナーが魔法を放つ時が来た。 妖精界でのフォルメントは元パートナーである深晴(みはる)と当代・妖精王との戦ったのを知らない者はいない。 そのフォルメントがパートナーを通して魔法を発動させる。 十真:「(一一フォルメント…)」 十真はぼぉ…としたトランス状態からゆっくりと目を閉じて、フォルメントの名を口にする。 そして、十真は頭の中に浮かんだ言葉と、浮かんだ行動をする。 彼は左手を肩幅の延長線上に伸ばすと、ゆっくりと目を開ける。 十真:「『片翼の抱擁(エンブレス・フェロウ)』」 トクン…そう唱えた瞬間、左肩から左手の先まで大気のような風が発生する。 それはまるで十真の背中から羽根が生えたようにも見えなくはなかった。 元土人形は立ち止まった彼等に向かって相変わらず、第二の腕である触手を伸ばしていた。 フォルメント:「今はただ…貴方の心に従いなさい。あたしは貴方を一一」 十真はフォルメントの言葉というよりも、存在だけでも安心していた。 フォルメントは普段の表情から真面目な顔つきをしていた。 十真は左手を左上から右下に振り下ろすと一一 彼等(パートナー):「わぁぁぁぁっ」 全ての彼等の身体を包み込むとするのではなく、正面を通過し一一壁となる。 その壁は十真から左回りにをして一周すると、元土人形を包むようにさらっていく。 第二の腕は十真の魔法によって掬(すく)うようにかき集められ、本体と共に風の膜に包まれた。 全員:「!!!」 十真の魔法によって、元土人形入りの風玉となった。 十真:「一一よし!、…で…これからどうしよう?」 魔法が完成した途端、いつもの十真が戻ってくる。 フォルメントは彼の言葉に苦笑するしかなかった。 フォルメント:「もぅ…発動するならその先を考え一一」 「なさいよ」と発言する前に、静まり返った空に声が響き渡る。
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