プロローグ

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  今年も桜の季節がやってきた。 ピンク色の花びらがヒラヒラと舞い散り、地面を敷き詰めている。   綺麗だが、正直掃除が大変だと誰もが思っているだろう。   麗花は、保健室の窓辺からその光景を眺めていた。鬱陶しいくらいの桜と、澄み切った青い空は麗花のいい暇つぶしになるのだ。   今日は入学式だったが、麗花は具合が悪いという嘘の理由をつけ、式を欠席した。   「具合はどう?」   静寂を切り裂くように、保健室の扉が開く。保健医の宮島先生が、麗花の様子を見に来たのだった。 麗花は、あまりこの先生に良い印象を持ってなかった。鼻につく香水とケバいネイル……谷間が見えそうなくらいの洋服……全てが保健室にミスマッチで嫌いだった。
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