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「それで死のうと思ったワケ?」
男口調でしゃべる彼女に、僕にとっての衝撃の出会いから十分後、なぜか事情を話している自分がいた。動機は単純だ。若者の自殺のきっかけに数えられる、厭世や将来の不安、それから失恋。僕の場合は、大人から見れば何のことはない小さな失恋と、それに伴う自暴自棄と、それらを鑑みない両親からの進学の催促だった。
つらかった。世間は僕を見捨てた。友人は愚痴も悩みも、軽い調子で聞いてくれる。けれどそういう奴に限って、既に恋人がいたり、告白された経験が多かったりと、僕にとっては救いにもならない。
自分は一人きりだ――死にたい理由を独白した結果、彼女は鼻で笑って遠くを見つめていた。
「それくらい、誰だって思ってることだと思うけどな」
――馬鹿にするなよ。
僕は言って、ふて腐れたまま座り込む。飛び越えるはずだったフェンスに背を預けているなんて、おかしな気分だ。
「だいたいね、失恋くらいで世の中に絶望するなんて、アンタ、どうかしてる」
――うるさいな。本気で好きな子だったんだよ。
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