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「アンタは、どうして高校に入ったのさ」
眩しい原色に目を細めていると、彼女がこちらを振り向いて尋ねた。反射的に振り向いた僕と、見つめる彼女の視線が、二度目の邂逅を果たす。
――どうしてだろ。僕にも、分からないや。
特に学びたいことがあった訳ではない。とりあえず、高校を卒業して、出来るなら大学に進学して、就職する。周囲が当たり前とするレールの上に、僕は自然と乗っていた。そうしなければ社会で生きていけない。そんな気もした。
「あっ」
顔を逸らして、彼女が遠くを見つめながら不意に声を発し、再び空に吸い込まれた僕の視線は、そちらを振り向く。三度目の視線の邂逅で、僕の視界に映ったのは、彼女の意地悪な微笑みだった。
「アンタがフラれた理由、分かる気がする」
出会い方が奇特で、印象に残りやすい、というのもあったかも知れない。それからたびたび、僕が屋上に足を向けると、彼女はブレザーのポケットに両手を突っ込んだ立ち姿や、スカートの中身が見えるのも厭わないあぐらの姿勢で、僕を出迎えた。最初はあまり合うことのなかった視線も、会うたびにその回数を増し、見つめ合うくらいは出来るようになった。
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