13人が本棚に入れています
本棚に追加
雨が降る中、彼は傘もささずにずっと天を見上げていた。
『こんな俺なんて…消えてなくなればいい……』
震える声でつぶやくように言った。
泣いているのかは打ちつける雨のせいでわからなかった。きっと涙を流しているんだろう。
僕はそんな彼の姿があまりに切なくて声をかけることすらできずに、ただずぶ濡れになっていく彼の姿を見つめるしかできなかった……
「ックション」
僕は翌日風邪を引いたみたいで朝からくしゃみの連発だった。
「あれ?保。風邪?」
僕を心配そうに見つめているのは翔太。昨日雨に打たれていた彼である。翔太は昨日の雰囲気とは全く違いニコニコ笑顔である。
まるで昨日の翔太は夢であったんじゃないかと思えるくらいだ。
「うん…風邪っぽい」
僕は流れてきそうな鼻水をすすりながら答えた。
体がダルい。
僕が机に突っ伏すと翔太はそっと寄ってきた。そして僕の前髪をなでつけながらおでこに手を当てた。
「ちょっと熱いかも…大丈夫か?」
僕は冷たい翔太の手のひらをおでこに感じながらそっと目を閉じた。
大丈夫?と聞きたいのは僕の方だ。
自分が消えてなくなればいいなんてつぶやくほど悩んでいるんじゃないのか?
…聞けはしないけど。
→
最初のコメントを投稿しよう!