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村には初春の風が吹きつけ、道や野山にはほんわかとした花の匂いが漂っている。
静かに桜の木が揺らめき、空を仰いで花弁が舞い散る。
そんな平穏な日々を送る風景の村には、一つの神社があった。
「ただいまー!」
可愛らしい制服を纏った、一人の少女。
元気な声でただいまを言うと、走り込むようにして神社の扉を開く。
「あら、おかえりなさい。美咲。学校はもう終わったの?」
「うん! 今日は部活がないから、早めに終わったんだ」
美咲は優しそうな顔つきの祖母と、ごく日常である会話を交え、床に腰をついて靴を脱ぐ。
すると、美咲は祖母の姿をまじまじと見つめて言った。
「あれ? おばあちゃん、なんでそんな格好してるの?」
「これかい?」
祖母は微笑みながら、しわしわの手で服に手をかける。
服……というより、彼女がはおっているのは綺麗な巫女の着物。
普段エプロンの祖母がこんなものを着ていることに、美咲は驚いたのだろう。
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