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祖母は大事そうに着物を見つめると、何か思い返すような口調で言った。
「これは、この明神家に代々伝わる巫女衣装でね……。今日はある大切な日だから、取り出して着てみたんだよ」
そんな着物に、美咲はうっとりする。
「綺麗ね……。でも、大切な日って?」
そう尋ねると、祖母は微笑みながら美咲に目配せし、廊下を歩き出した。
美咲はそれを不思議に思ったが、追いかけるように祖母の後をついていった。
そのまま2人が向かった場所は、明神神社の中央にある庭だった。
祖母は立ち止まり、庭の真ん中にある木を見上げる。
美咲は怪訝な顔で祖母を確認した後、目を細めてそれを見上げる。
「桜……?」
風に揺らされ、ざわざわと囁く木々。
美咲の手のひらに舞散る桃色の花弁。
庭の中央には、大きく聳え立つ2本の桜の木が満開の花を咲かせていた。
太陽の光を浴び、心地の良いざわめきの音。
それはまるで木が日光浴をしているように見えた。
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