18人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
美咲の隣で、祖母は静かに呟いた。
「あれから、時代は変わった。本当に……」
「おばあちゃん……?」
いつもとは別人のような、真剣な顔をした祖母だった。
突然の言葉に美咲は不思議そうに首を傾げた。
「今、この平和に暮らせるのも……全ては過去に生きた者達からの導。 そう、この桜の木も……」
何か、深い意味のあるような言葉を途中で途切らす。
彼女の真っ直ぐな視線は、やはり桜の木に向かっていた。一体、何を言いたいのだろうか……。
美咲は更に眉を潜める。
「ねぇ……おばあちゃん、何が言いた……」
「美咲にも話しておくべきかかの……姫巫女様よ」
一人でぼやぼやと呟き、全く話を聞かない祖母に美咲はため息をつく。
暫くし
我に戻ったように祖母は目を見開き、申し訳なさそうに美咲の方を向いた。
「少しボーッとしてたようじゃ。ごめんな、美咲」
「大丈夫だよ! けど……」
美咲は言いかけると、廊下から降りて裸足で庭へとかけていった。
立ち止まった場所は……
あの2本の桜の木の下。
桜に紛れ、美咲は微笑みながら祖母を見つめていた。
「さっきから不思議に思ってた……おばあちゃんの言った大切な日ってのと……意味有りげなこの桜の事、教えてよ!」
最初のコメントを投稿しよう!