雨の匂いは幸せの香り

6/9
前へ
/132ページ
次へ
タクヤの自転車はかなり古くて激しく揺れた。 振り落とされないように必死に肩にしがみつく。 タクヤは背が高いから、後ろからだとほとんど前が見えない。 目の前を真っ黒に覆う学ランから、かすかに雨の匂いをミサは感じた。 雨じゃなかったらこんな事は起きなかった… そんなことを考えている内に、自転車はミサの家の前に来ていた。 『ここだよね?はい、お疲れっ!』 タクヤはそっとブレーキをかけて降りた。 『ありがとう。じゃぁ、急いでるから!』 ミサは逃げるようにタクヤに別れを告げて家に飛び込んだ。 顔がカーッと熱くなり、倒れそうだったのだ。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加