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―――1800年代初頭。
日が傾きかけている黄色い砂浜。静かな波が押し寄せる。
そこへ、髪の長い一つ結びの小柄な男がどこに向かうでもなく、ただ歩いていた。
「おい、アル!」
その後を背が高く色黒の男性が駆け寄る。
「どうしたんだ。もうすぐ日が暮れるぞ。そろそろ帰ろう」
「音が…何だか行かないといけないような、そんな音が聞こえる…」
うつろな目で小柄な男が歩を進める。その様子を見て、背の高い男が慌てる。
「お、お前、大丈夫か!?」
「様子を見ましょう」
後ろから澄ました声が響く。声の主は茶髪を綺麗に一つにまとめたスタイルのいい女性である。背の高い男がため息をつく。
「様子をみるっていっても、様子が尋常じゃないって」
「最近アルに付きまとう者の正体につながるかもしれないわ」
「いや、だがよ…」
「あ…」
小柄な男が突然走り出す。突然のことに後ろの二人も慌ててその後を追う。
「どうしたんだ、いきなり!?」
「どうやら…あれみたいね」
女性が指を指す。その先には髪の長い茶髪の女性らしき人が波打ち際で倒れていた。小柄な男が素早く抱き上げる。
「大丈夫か!……あ…っ…」
突然小柄な男に頭痛が襲う。そこへ優しい女性の声が響く。
「あなたも…大丈夫ですか…?」
小柄な男が抱き上げた女性を見る。女性は片手を口に当てたまま、ゆっくりと男を見つめる。途端に小柄な男が硬直する。
「どうしたんだ、アル!」
「その人大丈夫なの?」
二人が駆け寄った音で小柄な男がハッとする。そして、信じられない顔でまじまじと女性の顔を見る。
「まさか…“リィナ”…?」
「アル…兄さんなの…?」
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