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「でも本当は、卒業してほしくない…。」
春のそんな姿を見て、
つい本音が出た。
春は花びらをひらひらさせていた手を止めて
こちらを見て
寂しそうな笑顔を見せる。
やべ。やっちゃった。
それは春が誰よりも一番
願っている事だ。
叶わぬ願い。
「ごめん、俺……」
「謝らないで。
愁がそう思ってくれるのは嬉しいよ。」
そう言って
いつもの笑顔を見せた春に
俺は泣きたくなった。
涙はもう
枯れたはずなのに。
涙を堪えるためか
無意識に春に背を向けて
桜の樹を見上げた。
「春と出会ってからもう3年か…。早いな。」
独り言のような呟きに
春は“そうだね”と
同じく独り言のように
返事をした。
「入学式のときだったな。」
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