1.桜庭

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  「でも本当は、卒業してほしくない…。」 春のそんな姿を見て、 つい本音が出た。 春は花びらをひらひらさせていた手を止めて こちらを見て 寂しそうな笑顔を見せる。 やべ。やっちゃった。 それは春が誰よりも一番 願っている事だ。 叶わぬ願い。 「ごめん、俺……」 「謝らないで。 愁がそう思ってくれるのは嬉しいよ。」 そう言って いつもの笑顔を見せた春に 俺は泣きたくなった。 涙はもう 枯れたはずなのに。 涙を堪えるためか 無意識に春に背を向けて 桜の樹を見上げた。 「春と出会ってからもう3年か…。早いな。」 独り言のような呟きに 春は“そうだね”と 同じく独り言のように 返事をした。 「入学式のときだったな。」
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