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レベル・A 光線少女
「お兄ちゃん。悪いけど、死んでくれる?」
それはとある真夏の夜。
那須コウタを悪夢から覚ましたのは、
歪んだ笑みを浮かべる那須ハルコだった。
「――はい?」
淡い月光は散らかった四畳半を曝け出し、
逆光気味にハルコの顔を隠す。
ハルコは長い艶々の黒髪を僅かに夜風に揺らし、
茫然自失中のコウタをまだ、幼さの残る丸い目でジッと見つめる。
そんなハルコを見て、ふと、コウタは些細ながら歪な変化に気付き、
「そんなパジャマ持ってたか?」
ゴスロリ風、メイド服のような黒いひらひらのパジャマを見て、
恐る恐る問うた。
コウタの記憶にある妹のパジャマは、純白ヒラヒラの可愛らしいお姫様のようなものなのに、
そのパジャマは硬い黒に染まってしまっている。
「ああ、コレ? お母さんとお父さん殺したら汚れちゃった」
返り血のついた頬を緩め、
ハルコは血管の浮き出た右腕を振り上げる。
「お兄ちゃん」
まるで新しい玩具を手に入れた子供のようにほくほくとした笑顔を浮かべて、
「私が高みに登る為に、死んでね」
その死神の鎌のような腕を振り下ろした。
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