第15章~鉄のハナ~

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***** 本社ビルのエレベーターは、予想していたよりも簡単に最上階手前まで僕を運んでくれた。 エレベーターを降りて、すぐ横の階段を上る。 足取りは重く、気持ちだけが先行する。 ふと、自分のしていることの意味が分からなくなる。 何のために来たのか、何をしたいのか、何が出来るのか。 ニュアンスの違う、同じ意味を持つ問いばかりが頭に浮かび、そして消えていく。 分かってる。それは、僕が望んだことだから。 「・・・助けに、来たんだ」 答えはそれだけで十分だった。 やかましく質問を繰り返す心を無視して、最上階のエントランスに立つ。 殴れば壊れてしまうほど薄いドアを開ける。 軋みながら開いたドアの奥は、暁前の闇を切り取ったかのような暗さだった。 「・・・鉄華、直唯」 呼びかけは反響し、そして消えた。 かわりに響く、鎖の擦れる音と、耳障りな声。 「いや、いやいや。近衛隊も数分で撃破か。なかなかの腕前だ」 「希はどこだ」 「それよりも話をしようじゃないか。せっかく久々の親子水入らずだ。世間話でも――」 その言葉の続きは、聞きたくもないし、聞くこともなかった。 「希はどこだって聞いてるんだ」 殴りつけた部屋の壁は、へこむを通り越して崩れていた。力の配分がうまくいかないのが自分でも分かる。それは今の自分を動かす激情のせいか、それとも。
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