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悠は、初めて見た五右衛門風呂だったので、入り方だけでも、四苦八苦したものの、薪割りの疲れを癒していた。
悠「ふー……スッキリした」
風呂から上がり、脱衣所で前もって用意していた下着と服を着、タオルを首に掛けながら廊下を、ヒタヒタと歩いていた。
廊下の途中に光が差し込んでいる部屋があったので、興味本位で覗くと、そこには背の低い1人の老婆がいた。
そこは、どうやら台所らしく包丁を使い魚を切っていた。
悠「あ……あの……」
悠が、恐る恐る声を掛けると、老婆が突然奇声を発し、包丁を持った手で悠に襲いかかってきた。
老婆「キェェェェェェ!!」
悠「ギャァァァァァァ!!」
悠はその場にしゃがみ込み、老婆が振り回していた包丁を間一髪の所で交わすと、身の危険を感じたのか、フラフラと足もとがおぼつかない足取りで悠は玄関まで走り、裸足のまま外へと飛び出そうとした。
悠(こ、殺される!)
悠はそう思いながら、飛び出そうとした所を服の後ろ首を何かに捕まれた。
悠が、体中に汗をかきながら振り向くと、そこには、先程の包丁を振り回していた老婆がいた。
老婆「逃がしはしないよ……」
悠は、自分の今までの人生の思い出が走馬燈のように蘇ってきた。
悠は、とうとう死んでしまうのかと思っていたが、少し走馬燈と言うにはおかしかった。
何故なら思い出が頭の中で浮かんでこないからだ。
夏希「ゆ、悠……?あんた風呂から出てきたと思ったら、何やってんの?」
悠が死を覚悟をした時、玄関には、不思議そうに眉間にシワを寄せながら2人を見ている夏希の姿があった。
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