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ドアの前に立ち、聖音は少し緊張しつつノックをした。
「どうぞ…」
すぐに応えが返り、聖音はドアを開けた。
「失礼します。――校長、お呼びでしょうか?」
その声に書類に目を通していた60代と思われる女性が顔を上げた。
「ああ、セイネ。忙しい時間帯に悪いわね」
「いえ……。ところで何の用でしょうか?……寮生についてですか?」
「いえ…実は急な事なのですが、我が校に留学生が来ることになりました」
そう言って校長は言葉を切った。
「……留学生、ですか。では、寮室の用意の件でしょうか?」
聖音は寮監としての当然の答えを返した。
「確かにそれについてもお願いすることですが、あなたには寮監として、出来るだけ留学生の相談に乗って上げて欲しいのです」
そう言って校長は聖音を見た。
「………そうですね」
聖音は一瞬遠い目をしてから頷いた。
知り合いのいない異国での暮らしの寂しさを、何よりも聖音自身が知っているのだから。
まして寮監。言わば親元を離れ生活する生徒達の親代わりなのだから。
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