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「くぁーっ! 負けたぁーっ!」
キャティが煎餅を片手にソファに倒れ込み、奇声をあげます。
「あれ、どうしたんですか?」
「ああ、野球で日本が韓国に負けたらしいわよ」
廊下から部屋を覗いたキィナに答えるのは、キャティの横で漫画を読んでいるロクナでした。
「ああ、そうなんですか。でも、負けても確か決勝には行けたはずですよね?」
「キィナ、ちゃうねん。決勝には行けるんやけどな、2位通過になってまうんや。2位通過やと、多分相手はキューバやで。辛い戦いになるんよ……」
「ふん、愚かな。最強を目指す侍が、相手など選ぶものか。誰と刃を交えようと、叩き潰すまでであろう」
「うわ! どこから湧いて出てきとんねん!」
不意に背後から現れた天狗に、キャティが思わず悲鳴をあげました。
「天狗の言う通りよ。アンタは黙って次の試合を応援すればいいの」
「せ、せやな……。よっしゃ! 頑張れ日本!! 目指すは世界一やっ!」
「はあ、単純ね……。そういえばコンセントは?」
「ノインさんなら、部屋でCD聞いてますよ。何か、今日渋谷でゲリラライブに遭遇して、そこで聞いた歌が気に入ったみたいです。家に帰ってからずっと聞いてますよ」
ふーん……と、つまらなそうに相槌を打つロクナ。
当のノインは、部屋でフィアのぬいぐるみを抱き締めながら、流れる旋律に酔いしれていました。
「……瞳を閉じれば、あなたがまぶたの裏にいることで、私はどれほど強くなれたでしょう。あなたにとって私もそうでありたい……か。本当にその通り……だよ。フィア……」
今日の日をタイトルに冠したこの曲に自分を重ね合わせ、ノインは静かに眠りにつき、次の朝を迎えるのでした。
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