思い出屋

《コンドーム》

はらはらとさくらの瞳から涙がこぼれ落ちる。

「悟…ごめん…」

絞り出すような声で一言、そう言った後、さくらは俯き、声を出して子供のように泣きじゃくった。

いつも穏やかなさくらがこれほどまでに取り乱したのを見たのは初めてだった。

「どうした？俺、なんか嫌なこと言った？重すぎた？」

悟はどうしていいのかわからない。
慌てふためきながら、とにかく謝るしかなかった。

「ごめん！ゴムなしでヤリたがったりして。しかもプロポーズとか、もっと雰囲気ある時のが良かったよなっ？俺ってホントにデリカシーねぇっつーか…」

しかし、何を言ってもさくらは泣きやまなかった。

その日を境に、さくらはさらに悟を避けるようになっていった。