《少年》

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「イカレてんな…」 溜息混じりに悟は呟いた。 そう、イカレている。 朝、さくらの呼ぶ声がして目覚める。 道を歩けば右隣にその存在を感じ、夜、寝付く時は温もりを確かめようと手を伸ばす。 でも、さくらはいない。 悟の手は空を掴むだけだ。 狂おしいほどの愛しさと恋しさが報われることはない。 そう思うたび、絶望感に襲われる。 虚しさと寂しさばかりが募る日々に、悟は憔悴しきっていた。
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