《少年》

10/11
前へ
/38ページ
次へ
悟は溜息をひとつつくと、ぐっと身体を伸ばして鞄を手に取った。 時計に目をやる。 そろそろ帰社予定時刻だ。 少年に視線を戻すと、彼はまばたきもせずに真っ直ぐ悟を見つめている。 「ぼーず。俺にはお前にやれるよーな、素晴らしい『思い出』なんざ、ねーよ」 もう一度、悟はガシガシと少年の頭を撫でた。 「僕は諦めませんよ…」 しかめ面で少年が呟く。 悟は「はいはい」と笑いながら背を向けた。 「さくらさんの記憶、必ず譲っていただきます…」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加