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悟は溜息をひとつつくと、ぐっと身体を伸ばして鞄を手に取った。
時計に目をやる。
そろそろ帰社予定時刻だ。
少年に視線を戻すと、彼はまばたきもせずに真っ直ぐ悟を見つめている。
「ぼーず。俺にはお前にやれるよーな、素晴らしい『思い出』なんざ、ねーよ」
もう一度、悟はガシガシと少年の頭を撫でた。
「僕は諦めませんよ…」
しかめ面で少年が呟く。
悟は「はいはい」と笑いながら背を向けた。
「さくらさんの記憶、必ず譲っていただきます…」
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