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「間もなく、15番線に電車が…」
アナウンスにハッと顔を上げた。
悟の目が見開かれ、視点が一点に止まる。
「さくら…?」
反対側のホーム。
決して距離は近くない。
しかし、悟は彼女の唇が少し乾いて荒れていることまで分かった。
真っ直ぐな黒髪。
小柄な身体。
青白い肌。
狭い歩幅。
ゆったりとした動作…
「さくら…!」
悟は思わず叫んでいた。
しかし、その声は走ってきた電車にかき消された。
呆然とする悟を置いて電車が走り去った後、向こう側にもう彼女はいなかった。
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