27人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
どれくらい探しただろう。
もう足が棒のようだ。
悟はフラフラとどこへいくともなく歩き、目についた公園のベンチに腰を下ろした。
一息つくと、急に喉が渇いてきた。
ぐるりと周りを見渡す。
公園の入口付近に自動販売機があった。
悟は力なく立ち上がると、またフラフラと歩き出した。
髪、切ってたな…
財布から小銭を取り出しながらも、悟は先ほど見たさくらを思い出していた。
半年前までは腰まであった長い髪が、肩程までに短くなっていた。
さくらはいつもそうだ。ひとつの恋が終わると髪を切る。
想いを断ち切って、新しい自分に生まれ変わるためだと言っていた。
今時、珍しい古風な女だ。
しかし、悟はさくらのそんなところも好きだった。
そして、さくらの髪が切られることはないと信じていた。
彼女から突然、別れを告げられるまでは…
最初のコメントを投稿しよう!