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やっぱり妄想みたいなだけだったのか…
まる五日、佳奈からは連絡が来なかった
もうすぐ遠くに行く事が決まっている佳奈
愛されていた訳ではない
愛していた訳でもない
何となく一緒に時季を過ごしていただけ…
そんなある日…
佳奈から連絡が入った
「逢えない?」
素っ気ない感じの言い方…
どうすればいい?
「もう家には何にもないけど…来る?」
じゃあ行く前に電話する…
久しぶりに、近くにある居酒屋“長之助”でごはんした
「ねぇ~てっちゃん…この街で逢うのは今夜が最後なの…」
それを言う為に俺を呼んだの?前に佳奈が言ってた言葉と何か違うしょ
「…」
ふと会話がとぎれた…
佳奈が俺の手を握って
「ごめん…」
謝らなくてもいいって
「明日、もう向こうに行くの…やっぱりてっちゃんの顔見たくて…」
こんなとこで泣くなよ…
俺は居酒屋の小上がりで店員の目を気にしながら
抱きしめ、優しく頭を撫でてあげた
すごくいい時間だったよ!佳奈と一緒にいた時間
ありがとね!ほんとに感謝しているよ
「私こそありがとうございました。知らない街で心細かったから、力強かった
今まで会った人の中で一番…すごくすごっくてっちゃんは優しかったし…」
いつも佳奈とは笑っていたかった
こんなのドラマみたいで、すごく嫌だったけど…仕方ないよね
いっぱい食べた?お腹いっぱいになったかい?
「うん…てっちゃんは?あんまり食べてないみたいだけど」
おうち帰ろ!だいぶお酒入ったから泊まって行っていい?
「明日、送って!駅までね」
千歳からなの?千歳まで送るよ!何時の便?
「いいよ!哀しくなりそう…」
わかった…駅までだね?
しばらくすると、佳奈は「疲れたー」と言いつつ、服を着たまま床に敷いた布団に入ってしまった
佳奈が子猫のようにすり寄ってきて、初めて腕枕をしてあげた
「もうちょっとだけこのままでもいい?」
優しく抱きしめてあげたかった
でも何故か出来なかった
少しの間まどろんでいただけ…
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