第一笑 おやじの変貌…

1/13
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ

第一笑 おやじの変貌…

夢? ある日の夕方・・・ 「ねぇ、海に行こうっ!」 少し車飛ばせばいけるしさ ちょっぴりだけ贅沢しよっ! 二人っきりで 彼女の提案を断る理由もないから そそくさと車に乗り込んだ 夜の海辺は誰もいない。 今の季節、少し肌寒いのか、いつもより近くにいる佳奈 「ねぇ、あの家の人も毎日こんな夜を過ごしているのかな~」 「どうして?」 「うん。そう思わない?」 「いいよね、こんなところの家に住みたい」 そういうと佳奈はくすくすっと笑う 「てっちゃん、もう隠居するつもり?」 「隠居したい…」 そういって彼女は笑うけど、人と付き合うのもやっぱり向き不向きがあると思う。 おれは人付き合いは不向きな方…たぶん 「さっきね、私も海を観ててさ、思ったの」 「ねぇ、てっちゃん…」 「ん?」 「うまくいえないんだけどさ、なんか、今は不安なんだと思う…」 「不安?」 「・・・不安って言ったら変かも。ん~、寂しいのかな」 寂しいじゃなくてさ、切ないのかもね なんかそんな感じ… そう言う佳奈を俺は見つめていた 「たまにこんな風に過ごすのもいいもんだな」 こういう時間…ゆっくり話をした事がなかった 俺の言葉に黙って佳奈はうなづいていた 「波の音とかさ、何気ない時に聞こえてくると落ち着かない?」 「・・・・確かに」 テラスに出ると聞こえてくるのは潮騒 テラスに座り、じっと海を眺めている佳奈は、やっと後ろの俺に気付いた 「何やってんの?」 佳奈に声を掛けた 「波の音聞いてた」 「部屋の中でも聞こえるだろ?風邪ひくぞ!」 「うん、心地いいなぁ~って」 「じゃあ一緒にいればあたたかい?」 そう言って俺も椅子に腰掛け、佳奈の肩を抱いた それから会話もなく、ただじっと二人とも肩を寄せ合って潮騒の音を感じていた。 真っ暗やみの中の海の潮騒のみなもとを、想像するには、 いくら時間があっても足りなく思えた 少し肌寒く感じたのか佳奈は 「中に入ろっ!」 「うん…」 佳奈は部屋の中に入るなり、ガウンを脱ぎすて子猫のように するっとベットにもぐり込んだ 午前1時、俺はこのときはまだ眠気みたいなものを感じてはいなかったが 佳奈の隣に…同じベットにもぐり込んだ 自然に繋がる佳奈の掌と俺の掌 そして佳奈の小さな唇に、俺は自分の唇をそっと押しあてた 「苦しいよぉ~そんなに強く抱きしめたら…」
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!