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第一笑 おやじの変貌…
夢?
ある日の夕方・・・
「ねぇ、海に行こうっ!」
少し車飛ばせばいけるしさ
ちょっぴりだけ贅沢しよっ!
二人っきりで
彼女の提案を断る理由もないから
そそくさと車に乗り込んだ
夜の海辺は誰もいない。
今の季節、少し肌寒いのか、いつもより近くにいる佳奈
「ねぇ、あの家の人も毎日こんな夜を過ごしているのかな~」
「どうして?」
「うん。そう思わない?」
「いいよね、こんなところの家に住みたい」
そういうと佳奈はくすくすっと笑う
「てっちゃん、もう隠居するつもり?」
「隠居したい…」
そういって彼女は笑うけど、人と付き合うのもやっぱり向き不向きがあると思う。
おれは人付き合いは不向きな方…たぶん
「さっきね、私も海を観ててさ、思ったの」
「ねぇ、てっちゃん…」
「ん?」
「うまくいえないんだけどさ、なんか、今は不安なんだと思う…」
「不安?」
「・・・不安って言ったら変かも。ん~、寂しいのかな」
寂しいじゃなくてさ、切ないのかもね
なんかそんな感じ…
そう言う佳奈を俺は見つめていた
「たまにこんな風に過ごすのもいいもんだな」
こういう時間…ゆっくり話をした事がなかった
俺の言葉に黙って佳奈はうなづいていた
「波の音とかさ、何気ない時に聞こえてくると落ち着かない?」
「・・・・確かに」
テラスに出ると聞こえてくるのは潮騒
テラスに座り、じっと海を眺めている佳奈は、やっと後ろの俺に気付いた
「何やってんの?」
佳奈に声を掛けた
「波の音聞いてた」
「部屋の中でも聞こえるだろ?風邪ひくぞ!」
「うん、心地いいなぁ~って」
「じゃあ一緒にいればあたたかい?」
そう言って俺も椅子に腰掛け、佳奈の肩を抱いた
それから会話もなく、ただじっと二人とも肩を寄せ合って潮騒の音を感じていた。
真っ暗やみの中の海の潮騒のみなもとを、想像するには、
いくら時間があっても足りなく思えた
少し肌寒く感じたのか佳奈は
「中に入ろっ!」
「うん…」
佳奈は部屋の中に入るなり、ガウンを脱ぎすて子猫のように
するっとベットにもぐり込んだ
午前1時、俺はこのときはまだ眠気みたいなものを感じてはいなかったが
佳奈の隣に…同じベットにもぐり込んだ
自然に繋がる佳奈の掌と俺の掌
そして佳奈の小さな唇に、俺は自分の唇をそっと押しあてた
「苦しいよぉ~そんなに強く抱きしめたら…」
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