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「母さん……いい加減クロクロって言うのやめない?
恥ずかしいんだけど……」
クロが席に着くと同時に、側に控えていた使用人達がテーブルの上に料理を置いていく。
その動きは見事なもので、余計な動きは微塵もなく、間もなくしてテーブルの上が賑やかになる。
「あらいいじゃない、余所様に聞かれているわけじゃないんだし」
クロの横に座る炎髪灼眼の美女は、上品に、しかしどこか無邪気そうに笑う。
所見、二十歳くらいに見えるこの女性、実は結婚していて、この二人の母親である。
歳はごく一部の人間知らないそうなのだが……。
「まぁそうだけどさ……まぁ、うん。
いやでもさ……」
「炎那、クロをからかうのもそれくらいにしてやれ、今日は予定が詰まっているんだ」
この状況を見兼ねたのか、クロの対角線上に座っている男性が溜息を吐く。
こちらの容姿も炎髪灼眼で、妻の炎那同様若く見える。
「そうだよー、今日は私の入学式なんだからね」
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