序章 平和な時間

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リリスは小悪魔のような妖艶な笑みを浮かべると、目をつむり、自分の顔をクロの顔へと近付けていく。 言葉だけを見れば『色気づいたお姉さん』といった感じだが、彼女の顔は朱に染まり、顔は小刻みに震えている。 そんなところを見ると、『お姉さん』ではなく『少女』と言い換えたほうが適切だろう。 「……いいんですかクロ様、ホントに接吻しちゃいますよ?」 リリスの顔はあと数センチというところで動きを止め、目を開けた。 サァァァァ 外では風が木の葉を揺らし、小鳥は少し控えめに囀っている サンサンと輝く朝日の中、世界は起きはじめていた。 「…………」 そして数秒、クロを見つめ、返事がないことを確認すると再度目をつむり、さらに距離を詰めていく。 もうお互いの吐息が掛かる距離、ゴクンとリリスが唾を呑む。 ガシッ 「……何してるんだリリス?」 その時、今まで死んだように寝ていたクロの腕が、まさに唇を奪おうとしていたリリスの頭を掴む。
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