序章 平和な時間

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「はぅっ……く、クロ様が起きないのが悪いんです。 悪い子にはお仕置きが必要なのです」 リリスは、淡々と正当と言えば正当らしい理由を述べるが、リリスは決して目の前のクロの目を見ようとはしない。 「ま、起こしに来てくれるのは嬉しいけど……その度に俺の唇を奪おうとするのは止めてくれ」 クロは異性の顔が目の前にあるというのに、驚き、困惑といった感じは無く、寧ろ呆れている、ともとれる苦笑を漏らす。 決してリリスが女性としての魅力が無いわけではない、クロが同性愛者なわけでもない。 ぱっちりとした瞳、少し長めのまつげに潤った桜色の唇、それらを含めた顔のパーツはバランスよく配置されたその顔は、『美人』と称されるに相応しいものだろう。 さらに、すらっとした体格ながらも、出るとこは出ていて、なんとも文句のつけようのない容姿だ。 そう、異性としてリリスを見れば、またクロの反応も変わっていただろうが、如何せんクロはそうは見ていない。 男女の区別を無くせば、年齢は違えど大して変わりはない。 ただその人にとって大切であるか否か、それだけだ。 故にクロの好きな人、といえばリリスは含まれるのだろうが、異性として好きかと問われればリリスはその範疇にはいないだろう。 つまり、クロはリリスを美人だと思っているが意識はしていない。 それ故のこの反応だ。 まぁ慣れ、というものもあるのだろうが。 「むぅ……仕方がないですね。 ほら、早く着替えて下さい」
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