序章 平和な時間

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リリスは体を起こすと、予め用意して置いた着替えを渡す。 「あぁ、ありがとうな」 クロはそれを受け取り、リリスに視線を送る、それを受けたリリスは、渋々といった感じで後ろを向く。 これは、リリスの年頃の青年であるクロを配慮しての行動だ。 しかし、それはあくまでクロの着替えシーンを見るためのカモフラージュで (クロ様、日に日に逞しくなってる……) とクロに隙ができる度にチラ見している。 もちろん、クロは気づいていない。 「よし、リリス、もういいよ」 リリスは着替えシーンを目の奥に焼き付けつつ振り返る。 若干興奮しているのか、リリスの頬は赤みがかっていることにクロは気づく。 「ん? なんか顔が赤い「だ、大丈夫です!!」 「そ、そうか……」 ちょっと理不尽さを感じるクロを余所に、クロの寝巻を回収し布団などの片付けを始めた。 「今日のご予定はどうするんですか?」 リリスは布団を押し入れに押し込みつつ尋ねる。 「うーん……まぁ今日は学校だけど、午前中で終わるからさ、その後街に買い出しに行きたいんだが……付き合ってくれるか?」 クロはリリスに微笑みかけ。 「はい、もちろんです」 片付けを終えたリリスも、満面の笑みでそれに答えた。 「あ、それと今日も鍛練、お願いしたいなー……なんて」 「もう、クロ様は私がいないと駄目なんですから」 と、その口調とは裏腹により一層顔を綻ばせる。 どんなことでも、クロに頼られる事がリリスの生き甲斐であり、また喜びでもある。 クロの為ならたとえ火の中水の中、彼女はクロの為ならどんなことでも成し遂げてしまうだろう。 手段を問わないのが玉に傷だが……。
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